スライスしたベ−コンの真空包装では保存後において部位により菌叢に差が認められ、脂肪部ではMicrococcusと一部のグラム陰性菌が速やかに増殖し、赤身部ではMicrococcusとLactobacillusが中心である。脂肪部のMicrococcus等の増殖により酸敗、又は酸化臭が生成する。赤身部の菌叢は食塩濃度と温度に大きく影響を受け、20℃ではMicrococcusが中心であるが30℃ではStaphylococcus aureusが優勢となる。このようにスライスしたベ−コンの微生物検査では試料採取方法によって結果が著しく異なる。
真空包装用にベ−コンをスモ−クすると、LactobacillusはMicrococcusよりもスモ−クに抵抗性があるので発育が促進されてその結果、ベ−コンは酸敗する。またこれを防止するためにベ−コンの食塩濃度を増加させると耐塩性のあるMicrococcusによりベ−コンは酸敗する。
ポ−クソ−セ−ジの製造工程中の微生物について特にMicrococcusについて検討した結果、原料肉ではM.ureae, M.varians, M.rubens, M.flavusが検出されるが菌数は少なく、塩漬でM.varians, M.flavus, M.roseusが増加し、練り合わせ工程で副原材料からM.ureae, M. citreus, M.caseolyticus, M.flavusが混入してさらに増える。乾燥燻煙中肉の温度が除々に上がる間にM.ureae, M.varians, M.flavus, M.conglomeratus, M.caseolyticusが増加して1.0× /g程度の菌数になる。菌数の増加により肉の鮮度が低下し、pHが低くなり肉の保水性が低下し酸敗及び異臭が生成する。
もずくは径1mmを越えぬ糸状が分岐した複雑な分岐糸状体で、粘質に富み、非常に柔軟で半流動体である。全長5〜6cmから30〜40cmに達し、黄緑色を呈す。糸状体は楕円形ないし円柱状細胞の縦行する内層と、内層細胞から体細胞に向かって発出する有色の細胞列からなる皮層とでできていて、若い部分は実質であるが老成部には微生物が多い。もずくの生育の時期は冬から初夏に及び、産地では生鮮のまま食用にされるが一般には塩水漬け又は酢漬けとして販売されている。これらの製品が保存中に異臭が生成し、酸敗、液化する現象が生じた。塩水漬けもずくをポリ塩化ビニル(PVC)及びポリプロピレン(PP)容器に入れて包装した製品は30℃、7日間保存で異臭が生成し、14日間保存で酸敗、液化して商品価値を失った。この異臭が生成して酸敗、液化した塩水漬けもずくの原因を検討した結果、微生物の増殖によるものであり、原因菌はM.colpogenesであった。はんぺん、大豆煮豆、魚肉、牛肉の4種類の食品にMicrococcusを接種して変敗試験を行った結果、各食品に対する変敗力は菌種により異なり、同一菌種でも株及び食品の成分の相違により菌の変敗に関与する程度が異なりはんぺんや大豆煮豆のようなたんぱく質とでんぷん質とが混在するものの方が動物性たんぱく質食品より強く、速く変敗するとされている。M.flavus, M.candidus, M.conglomeratus, M.caseolyticus, M.auranticus, M.agilis等の株中には上記4食品全てを強く分解して変敗させるが、M.flavus, M.candidus, M.ureae, M.freudenreichii, M.auranticus, M.etpidermidis等の一部の菌株は変敗作用に選択性があり、ある食品には強力な変敗作用を有するが他の食品には無害である。またM.flavus, M.freudenreichii, M.caseolyticus, M.epidermidis, M.rhodochonesの株の中には上記4食品全てに増殖しても殆ど分解を示さず変敗の原因菌とはならない。このようにMicrococcusは種によって活性に著しい差異があり、また特定の強い代謝能も示さないので、一般的には生理的に不活性な細菌群とみなされている。したがって有用菌か、変敗菌か等この菌の役割もそれぞれの食品に応じてまちまちである。
酸敗及び異臭の生成した脱気包装煮豆の変敗優勢菌の一つとしてM.flavusが検出された。本菌の加熱致死時間を検討した。同一温度における加熱致死時間は、煮豆中では、リン酸緩衝液中に比べてかなり延長されるので煮豆には保護作用があると考えられる。その防止対策として窒素ガス封入方法について検討した結果、本菌は微好気性細菌であるので、窒素ガス封入のみでは発育は抑制できない。したがって窒素ガスを封入包装した煮豆の貯蔵性を安定にするには、加熱殺菌を併用する必要がある。しかし窒素ガス封入包装煮豆は、脱気包装煮豆に比べて、熱伝導率が小さいので強い殺菌条件が要求されるが、高温度で長時間加熱すると、窒素ガスが膨張して包装材料が変形または破損する。そこで窒素ガス封入包装煮豆中のM.flavusを殺菌するための加熱条件を検討した結果、脱気包装煮豆の理論的殺菌時間に20〜30%の安全率を加算して80℃で50分、85℃40分又は90℃で30分間が適当であった。 |